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登録日:2010年5月10日

利便性の高い好立地のオフィス・店舗を確保

企業にとってオフィス・店舗環境は人材獲得、社員のモチベーションの向上、ブランディング、生産性の向上、業務の効率化など、さまざまな経営効果を生み出す重要なファクターとされています。一方で、オフィス・店舗の賃料の削減も大命題です。不況下では空室率が高まって優良物件を含む不動産の価格が下落するほか、オーナーとの値下げ交渉もしやすくなるので、新規企業は「お得」な入居先を見つけ出しやすくなります。


空室率上昇

事務用不動産サービス会社「シービー・リチャードエリス総合研究所」(東京)が発表した「2009年12月期の全国12都市(※1)の賃貸オフィスビル市場動向」によると、全国11都市で空室率が上昇し、空室率が10%を下回るのは東京23区6.5%、東京主要5区6.6%のみとなりました。 ただ、前四半期には東京Sクラスビル(※2)・Aクラスビル(※3)で空席率が低下し、テナントの誘致が進みつつあるかと思われましたが、今期は一転してSクラスビル7.8%、Aクラスビル6.5%まで急上昇しています。 Sクラスビルは2009年3月期に記録した集計開始以来の最高水準の6.5%を大きく上回る結果となり、Aクラスビルが6%台を示すのも2003年9月期以来のこととなりました。これは後継テナントが決定せず、既存ビルでは1万坪以上の大型空室が発生したり、丸の内の優良ビルでも空室が発生するなど、需要が弱含みで推移していることを表しています。


優良物件が「お買い得」に

空室率の上昇とともに、賃料は下落の一途をたどっています。

オフィス仲介大手の三鬼商事が発表した2010年2月時点の東京ビジネス地区の平均賃料(※)【表1】は18434円/坪で、前年同期比14.74%(3186円)の下落です。

大型新築ビル(※4)の平均賃料は24836円/坪と同20.64%(6459円)、大型既存ビル(※5)の平均家賃は18236円/坪と同14.30%(3044円)下げています。

テナント誘致競争は厳しさを増しており、賃料相場は大幅な値下げ合戦が進行中です。

また、国土交通省が発表した全国の公示地価(2010年1月1日現在)によると、全国約27000地点の地価は前年比4.6%減と2年連続で下落しました。

都道府県別の商業地の下落率では東京の9.0%が最大で、2007年から2008年の「ミニバブル」で上昇した地点の反動が大きく、上位10地点のうち9地点を東京都区部が占めました。

東京、名古屋、大阪の三大都市圏の商業地は-7.1%で2年連続の下落、三大都市圏を除く地方圏の商業地は-5.3%で18年連続の下落となりました。商業地の下落率のトップは東京都港区新橋一の26.9%でした。

一方、全国最高価格地点は東京都中央区銀座四の山野楽器銀座本店で、一平方メートル当たり2840万円でしたが、前年の3820万円から約1000万円下落しています。

2010年3月19日付けの東京新聞の社説は「地価下落のメリットを生かすことが重要」と指摘し、企業が新規事業のほかオフィスや工場など用地の先行取得を行うことを提言しています。

東京ビジネス地区 平均賃料/坪当り の変化【表1】 ※ 出典:三鬼商事「東京(都心5区)の最新オフィスビル市況2010年3月」

好立地への出店攻勢

このような賃料下落に目を付け、駅前などの好立地へ出店攻勢をかけている企業が出てきています。携帯電話販売会社「ITCネットワーク」(東京)は2009年9月、「ドコモショップ中目黒店」を幹線道路沿いから東急東横線中目黒駅前に移転しました。不況により好立地の物件を安く借りられたことが移転を後押ししたそうです。 過去の不況期にも、スターバックス・コーポレーションやタリーズコーヒーなどのように好立地を確保して躍進した事例があります。1998年の金融不況期に、両社とも一等地の店舗が空いた隙を狙って、「好立地・高イメージ・高単価」の路面店舗を出店したことが奏功したといわれています。 不動産コンサルタントの平野雅之氏は、不動産情報サイトの取材に対し、「現在売られている完成済物件は、不動産が好調だった2~3年前に計画されており、品質や内装にこだわっものが多いんです。こうしたお買い得な物件は、少なくなっていくと思いますよ」と不動産市場を分析。 不動産価格の下落のほかにも、不況時が「買い時」であることを説明しています。

マクドナルドの必勝法

2008年9月のリーマンショック以降の深刻化する不況の中で、店舗数を増やし続けている企業の一つとして、カジュアルブランド「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングがあげられます。

2009年3月には低価格衣料ブランド「ジーユー」から「990円ジーンズ」を発売し、9ヶ月で100万本を販売するなど躍進中です。

ファーストリテイリングは1984年にユニクロ1号店をオープンし、ここ数年は500坪規模の大型店の出店も進めており、2010年8月期には全国各地に大型店25店を出店する予定です。2009年8月期の店舗数は2258店(フランチャイズ店舗を含む)【表2】で、前年同期より300店舗増加しています。

ファーストリテイリングの店舗数の推移【表2】
※ 出典:ファーストリテイリングHP(会社情報)

そんなファーストリテイリングの柳井正社長とソフトバンクの孫正義社長が「これが僕たちの人生のバイブル」と評している書籍があります。それは52歳でベンチャービジネスに乗り出し、マクドナルド・コーポレーション(米国)を創業したレイ・クロックの自伝「成功はゴミ箱の中にある」です。

マクドナルド・コーポレーションは現在、世界119の国と地域に約30000店舗を展開し、世界最大のレストランチェーンに成長しています。

レイ・クロックはこの書籍の中で、不況下での出店のメリットをこう記しています。 「新店舗は景気の悪いときこそ建てる。なぜ景気が上向きになるのを待たねばならない? そんなことをしたらいまよりずっと金が掛かる。土地を買うに値するならすぐに建物を建て、ライバルより先に店を開く」

マクドナルドの必勝法
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